常陽リビング
Joyoliving News : 2022年05月23日掲載

「難しいほど力が出る」

牛久シャトーの模型を制作・牛久市の加瀬柾夫さん

「やっと完成しましたよ」。牛久市の加瀬柾夫(まさお)さん(86)は、模型の牛久シャトーを前に顔をほころばせた。

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模型制作に限らずどんなことでも意義を持って取り組むことが信条と加瀬さん


実物の1/50サイズ(縦60センチメートル、横95センチメートル、高さ55センチメートル)の模型で制作期間は足掛け3年。

ポスターや自ら撮影した写真を元に半年かけて手書きで図面を起こし、一つひとつ手作りしたパーツを組み立てる、根気がものを言う地道な作業。

「創造力を膨らませながら自己流で作っています。特殊過ぎて誰にも手伝ってもらえませんよ」とほほえむ笑顔に作品への自信をのぞかせた。



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異なるサイズのレンガを手書きで表現した外壁


建築模型との出合いは20年ほど前。
偶然目にした新聞広告がきっかけで通信教育を受講した。

特に強い思い入れがあったわけではなかったが「今思えば何かのタイミングだったかな」と振り返る。

パネルのカット方法や糊付けなど模型制作の技術と併せて建築の勉強もスタート。

「数学は学生時代に習ったことを思い出しながら取り組んだ。
同級生からは『当時は勉強していなかったよな』ってからかわれたけどね」。

10センチメートル四方のマスからスタートし、2年かけて基礎を身に付け建築模型士の認定を受けた。
細かい作業の連続に途中で断念する仲間もいたが「夢中になった。意欲が湧いたね」。



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質感を出すために屋根の壁を丸くカットして重ね張りした

認定後はハウスメーカーや建築事務所などからの依頼で住宅模型を制作するのが一般的だが、チャレンジは続く。

10年前の76歳の時には模型技術を生かし独学で東京中央郵便局のレリーフを制作。

照明を当てると見事に壁面の建物が浮かび上がる仕掛けは、緻密な計算によるもので「他の人にはまねできない。見た人は皆驚きますよ」



千葉県香取市(旧佐原市)生まれ。縁あって行方市でレコード店を開業し、後に音楽関連の店を7店舗展開するなど経営者としての手腕を発揮。

「起業した1970年代後半はビートルズやグループサウンズ全盛期。レコード産業が上昇気流に乗るタイミングに合った。何でもタイミング」。

50歳の時、街の発展を期待して牛久市に移り住んだ。



牛久シャトー制作のきっかけは、国の重要文化財であり日本遺産に向けた動きなどから模型にする意義を感じたから。

「誰も作っていなかったし、作品が注目されるタイミングにぴったり合った」。

制作開始からほどなく、2020年6月に牛久シャトーは日本遺産に認定された。



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10年前に制作した東京中央郵便局のレリーフ



各パーツに使用する材料の選定から加工、組み立てまですべて一人でこなす。

「100均や手芸店、ホームセンターを回って使えそうな素材を日々探している。何しろ見本がないから使う道具もカッターから大工道具までさまざま。でも苦労はないよ。一つひとつの作業が楽しいからね」


牛久シャトーで特に時間を費やしたのは建物の象徴ともいえるレンガの壁。
自然の風合いに近い独特の色味の紙を探し、手書きで目地を落とし込んだ。

「積み方が互い違いじゃないから大変だったよ」。写真を元に忠実に再現した。

当初は3体作る予定だったが「あまりの手間に無理ですね」と笑う。
完成品はいずれ牛久市へ寄贈したいと考えている。
今後は出身地にある千葉県有形文化財指定の佐原三菱館の制作をはじめ、建築模型の全国組織を作り技術継承や裾野を広げたいと意気込む。

「いつか日展の工芸の部に模型のジャンルが加わることが夢。難しければ難しいほどパワーが出る。夢は大きいよ」



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