総務省が発表した昨年7月時点の推計によると、65歳以上人口は前回調査より31万4000人増え3611万5000人に。5年後、団塊の世代が75歳の後期高齢者となり医療や介護などの社会保障費の急増が懸念される中、住み慣れた地域で最期を迎えるためのさまざまな取り組みが各所で行われている。
県南部の牛久市は人口8万4816人(令和3年2月1日現在)。
3年前に策定した市高齢者保健福祉計画によると、65歳以上人口は5年後全体の30%に達し、要介護(要支援)認定者数も5年後4000人を超える。
市内に駅直結のシニア向け分譲マンションが完成したことなどもあり、「当初の予測値より早くなる見込み」(市担当者)という。
今年度、市では高齢者の生活相談や成年後見制度などの権利擁護支援などを行う地域包括支援センターを新たに神谷小学校区・おくの義務教育学校区に設置。
市内にある社会福祉法人に業務を委託している。
同センターの運営には保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの専門職員が必要で、住み慣れた地域で最期を迎えられるかどうかは介護業界の慢性的な人材不足問題と密接に関係している。
厚生労働省がまとめた「介護人材にかかる需給推計」によると、2025年に必要となる介護職員が約253万人なのに対し、供給の見込みは約215万人で、およそ37・7万人もの「需給ギャップ」が発生すると懸念されている。
「離職や転職の理由は、必ずしも金銭面や介護職はきついといった印象だけではないと思う」と指摘するのは、今春、牛久市内に地域密着型特養ホームと小規模多機能型居宅介護事業所の開設を予定している社会福祉法人牛久博愛会の施設長柴田正樹さん。
柴田さんによると、同グループ法人の既存施設(つくば市の社会福祉法人・博愛会)では介護を行うユニット間の会議に専門職や施設管理者が参加、現場職員による意見や日々の「小さな気付き」を吸い上げている。
また、半年ごとに行う個別面談で各自の目標を設定することで達成感ややりがいをもってケアに当たれる仕組みづくりにも力を入れている。
「人の役に立ちたい」と応募してきた当初の気持ちに返れるような人事評価制度を導入後、離職率ゼロをキープ。
柴田さんは「新しくオープンする牛久の施設でも、引き続きサービスの質向上や地域貢献に努めたい」と話す。
市では、新規参入する事業者が地域包括支援センターと密接に連携し、専門知識を生かした講演会や利用者家族向けの介護講座を開くなど地域密着型サービスが「介護する家族にとっての精神的な拠り所」となることに期待を寄せている。
同会では、市内に建設中の施設内にある「地域交流スペース」を活用し住民向けの健康教室や相談窓口、近隣学生の自習室への活用など、地域のニーズに合わせた施設運営を検討している。