1950年代から現在までの国産車を中心としたカタログや雑誌を扱う古本店がつくば市にある。作り手のこだわりが感じられる旧車カタログを通し、日本のものづくりへのこだわりや時代の変遷を感じている店主の松浦正弘さん(68)は、よわい70を前に旺盛な作家活動も行っている。
静岡県出身の松浦さん。二十歳で定時制高校を卒業後プレス工や掃除、荷物運びなど約40の仕事を転々とし「長くて半年、短いと1週間しか続かなかった。まるで人生の落伍者でしたよ」。
転機は25歳。街の書店で働き始め程なく独立した。東京の国分寺に5坪の店を構えたものの経営はすぐに行き詰まった。そんな時目に留まったのが車雑誌の読者情報交換欄。コレクターが販促用カタログを売買していた。
自らもある程度コレクションがあったため物は試しと店頭に置くとこれが大当たり。「(ディーラーから)タダでもらったものがお金になるなんて」と買い取りも好評で、じわじわと知名度を上げた。「地方から文化を発信したい」と24年前、筑波サーキットのイベントに出た帰りに夕日に染まる筑波山を見てつくばに転居した。
昨今は各メーカーこぞってスタイリッシュな冊子を発行しているが「カタログは時代を映す鏡。最近はパソコンの普及で写真やコピー、レイアウトが昔に比べ単調になったし、商品の車もコストダウンと均一化で突き抜けたデザインは少なくなった」と松浦さん。
カタログともう一つ店の売りだった自作の「総天然色旧車ポストカード」も、以前は広告になるからとメーカーも二次利用を大目に見ていたが、2000年代に入り知的財産権に対する意識が変化すると新たな製作は厳しくなった。
そんな状況でも数年前から長年夢だった作家活動を始めた松浦さん。「個性を表現するのは難しい時代だが、表現活動は続けていきたい」と車を題材にした本を4冊自費出版している。
松浦さんの店では5月9日(土)から5日間「1990年代の国産ワゴンとRV車のアクセサリーカタログ」と題したフェアを行う。
■問い合わせ
029(879)0361/ノスタルヂ屋(つくば市花畑1-12-17)
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