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2019年4月1日(月)

「おもちゃ病院」親子に人気

完治率96%の“凄腕ドクター”集団

壊れたおもちゃを無償で修理する取り組みが親子連れに好評を得ている。つくば市内で活動する「おもちゃ病院さくらんぼ」は、メンバーのほとんどが電子工学の専門家。知識と技術を駆使して行う治療で昨年は650点を手掛け、“完治率”は96%。「思い出の一部」の汚れや傷にはあえて手を入れず、年々構造が複雑化するおもちゃの修理を楽しんでいる。


おもちゃの修理を不安そうに見つめる親子。ほどなく笑顔で「病院」を後にした

3月中旬、老人福祉センターとよさと。20代の母親に手を引かれた2歳の女の子が、ネックレス型のおもちゃを握りしめてやってきた。

「どうしました?」と優しく問いかけるのは、おもちゃドクターの井上修さん(68)。「問診」により数日前からスイッチを入れても音や光が出なくなったとの訴えを聞き出し「診察」がスタート。

慣れた手つきで内部を点検し破損箇所の有無を調べる。数分後に下された「病名」は電池切れ。ボタン電池の品番をメモした紙を母親に手渡し「お母さんに新しい電池を買ってもらってね。また遊べるようになるよ」と女の子に話しかけると、照れたような笑顔を井上さんに向け小さな声で「ありがとね」とつぶやいた。

ドクターは元研究者


おもちゃを治療する内野さん(手前)と井上さん(隣り)—3月8日、老人福祉センターとよさと

同所で月2回開催されている「おもちゃライブラリー事業」。子どもたちや保護者同士の交流を目的に1988年からつくば市社会福祉協議会が主宰し、毎回40人ほどが来館。木の香り漂うホールはたくさんのおもちゃに囲まれて思い思いに楽しむ子どもたちと、子どもを見守りながら談笑する保護者でにぎわっている。

その一角。そろいのエプロン姿で黙々と作業をしているのが「おもちゃ病院さくらんぼ」のメンバー8人。持ち込まれるおもちゃは電池で動く電車や車、ままごと用のキッチンやキャッシャーのほか、木馬など木工のおもちゃから人形、万華鏡など多岐にわたるが、半数以上はその場で治療が完了する。この日はオープン1時間ですでに10個以上の壊れたおもちゃが持ち込まれ、ドクターたちはその修理に追われていた。

動かなくなった救急車を解体して内部の回路を調べていたのは、おもちゃ病院さくらんぼの設立者、内野權次(けんじ)さん(80)。高エネルギー加速器研究機構(KEK)在職時には2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠さんの研究の基礎となる加速器を建設するなど数々の実績を経て、筑波技術短期大学(現筑波技術大学)の教授として聴覚障害者への情報伝達法などを開発。退官後はつくばエキスポセンターのボランティアインストラクターを務めるなど、子どもたちに科学の面白さを伝えてきた。

在職中から近所の子どもたちに頼まれておもちゃの修理をしてきたが、おもちゃドクターの活動を知り「日本おもちゃ病院協会」の講習を受けて公認ドクターに。2004年、おもちゃライブラリー事業開催時に併設する形で活動をスタート。現在は教員や研究者、メーカーの技術者などの経歴を持つ60代から80代の8名が在籍し、それぞれの得意分野を生かしておもちゃに新しい生命を吹き込んでいる。

難しい治療が真骨頂

最近のおもちゃは構造が複雑化する傾向にあり、持ち込まれたおもちゃの約4割が「入院」となる。自宅に持ち帰り、ときには時間を忘れてパーツ作りに没頭することも珍しくないが「難しいほど完治したときの達成感がある。頭の体操をさせてもらっていますよ」と楽しみながら日々研さんを積んでいる。「不安そうな表情でおもちゃを持ち込んできた子どもが、動くようになったおもちゃを見て満面の笑みを浮かべるんです。その笑顔を見るためにやっているようなものですね」

おもちゃ病院は、老人センターとよさとのほか、つくば市内のショッピングセンターでも定期的に開催されている。次回は4月12日(金)に開催予定。
HP:おもちゃ病院さくらんぼ

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