今や日常風景となった図書館での本の貸し出し作業。県内初の公共図書館「石岡書籍館(しょじゃくかん)」の蔵書が、5つの時代を超え石岡市立中央図書館で大切に保管されている。
明治22年9月9日、総社神宮(常陸国総社宮)の祭礼の日、石岡尋常小学校(現石岡小)内に県内初の図書館「石岡書籍館」が開設された。書籍館は明治新政府が設立した公共図書館で、『茨城県学事第二年報』(31年)によると「新治郡石岡町有志ノ設立ニ係ルモノニシテ公衆ノ閲覧ニ供セリ」とある。
「私立」として始まった同館だが、開館直後に発行された書籍目録も残されている。それによると、手塚正太郎館長ら五十数人の有志により和漢書や洋書などが寄贈され、同30年頃には所蔵図書約2400冊、年間268日開館、利用者は500人を超えたが、閲覧者の大半は「学校教員ナラビニ書生」だった。
石岡書籍館はその後幾度の改称を経て現在の中央図書館となり、今年130周年を迎えた。保管されている本は、東西の文明を比較した福沢諭吉『文明論之概略』や西洋に追随する日本の姿を憂えた東海散士の小説『東洋之佳人』、フランス革命から普仏戦争までの現代世界史をまとめた箕作麟祥の『万国新史・巻之四』など。
筑波大学図書館情報メディア系教授の綿抜豊昭さんによると、蔵書印から寄贈者や開館直後に所蔵されたことが分かるといい「関東でも最初の図書館では。町有志の方々の気概が伝わってくるようです」と話す。
本は9月24日(火)〜27日(金)午前9時〜午後5時まで、筑波大学春日エリア情報メディアユニオン(つくば市春日1-2)で展示される。終了後は石岡市立中央図書館で閲覧可能。