つくば市松塚の東福寺郊外に平将門の娘・滝夜盛姫(たきやもりひめ)の伝説にまつわる遺構がある。
滝夜盛姫は親王を名乗った平安時代の豪族・平将門の娘。親王を名乗り、時の中央政府から反逆者として討伐された将門をめぐり、都の軍勢は一族郎党をも滅ぼそうと娘にも追手を出した。その逃避行ルートは岩井、筑波山、土浦など諸説あるが、敗走しつつ将門の本尊・地蔵菩薩と共に寺に入った。
ところがそこは今の東福寺ではなく、現在栄公民館の場所。橋本幸雄住職によると「今の東福寺から見て西にあったので西福寺と呼ばれていたそうです」。そもそもどちらの寺で尼になったかも不明だが、姫は尼・如蔵尼(にょぞうに)として仏門に入った。
滝夜盛姫の墓は東福寺の西200メートルの畑の中にあり、毎年住民によって塔婆が建てられている。寺の入口には墓の石棺の一部とされる重厚な一枚岩が計4枚横たわり、住職の幼少時代には近くを流れる川の橋として使われていた。
明治期に盗掘に遭ったという石棺は一枚が畳3畳分ほどの大きなもので「ここに歴史上の人物がいたと思うと感慨深い。いつかは将門公と滝夜盛姫の霊を鎮めるため、石棺を元に戻して立派な墓を造り、寺の縁起(始まり)に応えたい」という住職。
※筑波山では滝夜叉姫と伝わるが、東福寺周辺の言い伝えでは「滝夜盛姫」
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