つくば市の安福寺本堂脇に、岩室の大師様が静かに並んでいる。
約50年前、檀家や信者が所有する大師像を寺に奉納しようとしたところ、旧谷田部町西岡の岡野宮之助さん、同町山中の小川茂さんが一大決意。2年の歳月をかけ敷地内の竹山に四十二間(約50メートル)の横穴を掘り、周囲をコンクリートで塗り固めた。内部は人がかがまずに歩けるほど広く、各家の大師像60余体を奉納。しかし、排水設備を設けなかったため洞窟は次第に水浸しに。子供が中で遊ぶと危険だと判断した住職の手で1989年(平成元)に封鎖された。
「自分が小さいころ二人が一生懸命穴を掘っていたのを今でも覚えています」と述懐するのは舘野正弘住職。檀家や信者は洞窟信仰に基づき、穴の中に大師像を奉納したと推測される。「二人は作業中、竹山を岩山に見立てて掘っていました。だから岩室の大師様と呼ぶのです」。現在本堂脇に整然と安置される大師像一体一体には「南無大師遍照金剛」という弘法大師への祈りの言葉が刻まれている。
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