県指定文化財・百体磨崖仏(百体観音)は、かすみがうら市中志筑にある閑居山の中腹、巨大な岩の壁面に彫られたおよそ百体の仏像。
かすみがうら市郷土資料館学芸員の千葉隆司さんによれば、磨崖仏には年号の記録がなく時代によって変わる像様(デザイン)にも特徴がないため、時代の特定が難しいという。だが彫られた仏像から大きく三つの時期に分けられる。初期と思われるのが地蔵菩薩(大1体、小32体)で、立像と台座に座ったものがあり、合掌もしくは両手で宝珠を持っている。中期は装飾の多さと頭部の二股が特徴的な観音菩薩(58体)。後期は弘法大師で左手に数珠、右手に五銛杵(ごこしょ)と呼ばれる武器から発達した仏具を持っている。
また、閑居山には弘法大師が開山したとされる志筑山惣持院願成寺があり、寺中興の僧・醍醐寺系の乗海(じょうかい)が磨崖仏を彫ったといわれている。崖の花崗岩を彫ったものとしては県南地方では非常に珍しく、西大寺(奈良)が本山の真言律宗の石工集団の影響が濃いという。頂上からの景色は茨城百景にも数えられ、遠く恋瀬川や霞ケ浦も見渡せる。