その昔、鬼怒川の岸辺には渡し場が数多くあった。現在、下妻市となった同市皆葉にも同市宗道の河岸から渡し舟が着いていた。その川べりの土手から坂を下りると左手に巨木が見えてくる。高さ23・6メートル、幹周り6・4メートル、根本周囲7・4メートルの無量院の大ケヤキ。推定樹齢500年の市指定文化財。生活道路を挟んで奥には無量院の敷地が広がっている。
「一時期は樹勢がなくなってしまったんです」とケヤキの様子を見つめる住職の妻、鈴木直美さん。原因は砂利道を舗装してできた生活道路だという。鬼怒川土手が舗装され車の往来が激しくなり、木の周りを走る車に巨木の根が踏まれ続け傷んだ。「今は木材を置いて根っこが踏まれないように守っている状態です」。その効果もあってか「ここ数年でようやく樹勢も盛り返してきました」と鈴木さん。
ケヤキは下妻市と隣の常総市の境目にあり、周辺は鳥の鳴き声と葉のそよぎだけが聞こえてくる。文字通りひっそりとそびえ立ち、近所の人が時折散歩する姿を見下ろすように見守っている。
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