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2019年4月15日(月)

土浦の映画館、異例のロングラン

公開から800日、映画「この世界の片隅に」

戦時下の広島が舞台のアニメ映画「この世界の片隅に」が、劇場公開から2年半を経て異例のロングランを続けている。現在、全国唯一の上映となった土浦市内の映画館はファンの間で広島市、呉市に続く「第三の聖地」に。こうした動きと呼応するかのように、土浦市内では市立博物館と連携した「海軍の街歩きマップ」が作製された。

期待に応える


1カ月で約100通届いたファンアート。「40年やってきてこんなこと初めて」と話す寺内龍地さん=4月5日、土浦市川口の土浦セントラルシネマズ

「戦争しよっても蝉は鳴く、蝶々も飛ぶ—」

映画の舞台は1944年(昭和19)の広島。18歳で呉に嫁いだ主人公のすずが戦時下でも米を節約した食事を作り、新しい家族の下で居場所を見つけ前向きに生きる姿を描く。2016年秋の封切りからの累計動員数は210万人超、ミニシアター系作品としては異例の大ヒットを記録した。

「利益優先ならどんどん新作に切り替えるべきなんでしょうが。結局、できませんでしたわ」と苦笑するのは、土浦セントラルシネマズ社長の寺内龍地さん(64)。試写で主人公の朗らかな生き方に感銘を受け「良い物は残そう」と上映を続けた。先代の寺内龍太郎氏(元市議会議長、故人)から海軍で発展した街のにぎわいを聞き、「映画館経営は、金が取れないところに金を掛けろ」と言われたことも影響した。

SNSでいつの間にか「全国唯一」と拡散され、インターネット上には土浦駅から映画館への道順がアップされた。ロビーは全国から届いたファンの絵やメッセージ、広島県の高校生が作った学校新聞や新聞広告など、さながら「コノセカ博物館」の様相を呈した。それまでの同館のロングランはタイタニック(97年)の1年2カ月が最長だったが、「コノセカ」は今月下旬に前人未到の「800日連続上映」を迎える。

今や県内に17ある映画業者のほとんどがシネコンで、新作を上映する個人経営の「封切館」は北関東でも最後の一館。経営は正直厳しいが、今年12月には未公開シーンを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が公開予定。「それまでは意地でも上映を続けるつもり。遠くから土浦まで来てくれるファンの皆さんに恩返ししたいからね」

ささやかな幸せ


土浦街歩きマップ(かめのこジャーナル第2号)には主人公すずの人生と土浦の歩みを年表で対比

午前10時の上映が終わると、「コノセカ」ファンはかつて予科練生御用達だった食堂でお昼を食べる—。「この流れってすごいことだと思いません?」と話すのは、映画と同じ昭和19年当時の土浦街歩きマップ「この世界の片隅の映画館のあるまち」を有志と作製した「時代の風景編集委員会」代表の飯島ゆかりさん。

昨年9月、同館で行われた公開2周年イベントに参加した飯島さん。高射砲の破裂音や空襲の爆撃音のリアリティに驚き、19歳の少女のささやかな生活が「かけがえのないもの」と思えた。

市立博物館で「土浦は呉と同じ海軍の街」だと教わり、学芸員と街中を歩き回った。航空技術を指導するために来日したイギリス空軍センピル教育団の縁で土浦に広まったパン屋、山本五十六長官ら将校が利用した料亭、予科練生の面会時の待ち合わせ場所だった亀城公園、軍の指定食堂だったそば屋、芸者屋や小料理屋がひしめいていた花街、金属供出された郷土の偉人の銅像―。見慣れた土浦の景色が新鮮に映った。

街歩き地図を手に取り、「かつての『空都』の面影を感じたり、最盛期に8館あった土浦の娯楽文化を守っていくきっかけになれば」と飯島さん。マップは土浦市立博物館、土浦セントラルシネマズ、がばんクリエイティブルーム、城藤茶屋で無料配布中。

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