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2019年2月4日(月)

市民ら残す、横綱の記憶

稀勢の里現役引退

大相撲初場所で約17年の現役生活を終えた元横綱・稀勢の里(荒磯親方、32歳)。のしかかる重圧に耐えながら真っ向勝負に挑み続けた力強さだけでなく、併せ持った不器用さで多くの人の心を引きつけた「われらの横綱」。その記憶をそれぞれの形で残していく市民らの姿を取材した。

夢のような「神対応」


宝物のサインと趣味の切り絵作品を手に。落合光男さんと洋子さん=牛久市内

「ありがとう!」初場所4日目の東京・両国国技館。地元牛久市から駆け付けた郷土後援会の会員たちが、横綱不在の土俵に向けて声を合わせた。ファン歴7年余の落合光男さん(74)と妻の洋子さん(67)も「今までの思い」を込めて叫んだ。

きっかけは1枚のサイン色紙。2011年12月、昇進直後の新大関が牛久市役所を表敬訪問した。大勢の市民が詰め掛ける中、幸運にも大きな体のすぐそばに近付けた洋子さん。「おめでとうございます!」。持参した色紙とペンを差し出すとスラスラとサインしてくれた。夢のような「神対応」に一瞬で心が奪われた。

夫婦ですぐに郷土後援会に入会。光男さんは土俵内外の稀勢の里関の表情を趣味のカメラで捉え続けた。連続優勝した一昨年、郷土後援会の激励会で洋子さんが趣味の切り絵で作り上げた作品をプレゼントすると「ありがとう!」と受け取ってくれた。大きく、少し高めで、優しい声だった。

連続休場明けとなった昨年9月場所からはテレビ画面に夫婦で手を伸ばし「相手力士を押すように」観戦。「どうしても勝ってほしくてね」。引退後もニュースのチェックや応援仲間との情報交換は続き、色紙と一緒に新聞の切り抜きや写真の数々など宝物は増える一方。「思い出に浸るのは、まだ早いかな」。荒磯親方が育てた力士の応援に行く楽しみもできた。

引退しても


稽古に励む小学生ら=つくば市天王台の筑波大学武道館内相撲場

ひたむきに強い相手に立ち向かった稀勢の里の姿は子どもたちに受け継がれ、地元では郷土の英雄にちなんだメニューが変わりなく愛されている。

土浦やつくば市などの小中学生らが週2回ほど汗を流す土浦相撲倶楽部。顧問で県相撲連盟理事長の須田義之さん(62)は「身近な憧れとして地元横綱の存在は大きかったと思う」と語る。

「負ける姿を見たくなかったから、正直ほっとした」と安堵の表情を見せたのは、小学5年の中山建市君(11)。欠かさず見ていた大相撲中継では、いつも手に汗握りながら家族で応援していたという。今の目標は両国国技館で行われるわんぱく相撲の全国大会出場。低学年から通う稽古場ほか自宅でも毎日四股を踏むなど、黙々と稽古に励んでいる。


「横綱ブレンド」の書とイラストは地元作家が手掛けた=牛久市南のサイトウコーヒー

牛久市内の喫茶店では、「横綱ブレンド」と名付けたコーヒーを提供中。「第72代横綱」にちなみ豆の配分を7対2対1としたオリジナルブレンドは、力強さとキレの良さが特徴。2年前の横綱昇進を機に生まれた一杯を味わいに、多くの人が訪れるという。

マスターの齋藤孝司さん(45)は「ブレンドは永久に『現役』。子どもたちが大きくなった時に横綱を思って飲んでくれたら。コーヒーを通して、輝かしい功績を残した横綱のことをこれからも市民に伝えて続けていきたいですね」。

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