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2018年6月18日(月)

生活脅かすイノシシ被害

農作物の被害深刻

筑波山周辺でここ数年、イノシシなど「有害鳥獣」による被害が深刻化している。北条米で有名なつくば市の山麓地域では一昨年度の農作物被害が年間3千万円、八郷地区を有する石岡市内では9年前に比べ捕獲数が約18倍と激増。周辺自治体の情報交換や猟友会と市民の連携など、地域一体で問題に取り組む必要性が急務となっている。

現状と課題


イノシシに食い荒らされたタケノコを指差す石岡市鳥獣被害対策実施隊長の鈴木哲夫さん=6月7日、石岡市内

人家や農作物への被害が年間200件を超える石岡市で先月、イノシシの基本的な生態を学ぶ市民向け講演会が初開催された。同市では5年前から複数の猟友会で構成する「石岡市鳥獣被害対策実施隊」が6月と9月の1カ月間、毎日パトロールしている。隊員の平均年齢は67歳だが、市では若手を育成しようとわな猟免許の取得ほか今年から新たに猟銃免許取得への助成も開始した。

講演では、収穫し忘れた農作物をそのままにしないなどの対策や関係各所の連携を指摘。参加した小幡地区の男性は「周りは耕作放棄地や兼業農家が多い。地域ぐるみといっても、なかなか難しい」と話した。

つくば市では、筑波山麓9区会の要望を受け昨年住民アンケートを実施。これまで年間100万円程度とみられていた農作物被害額が約3000万円(平成28年度)と極めて深刻な状況であることが浮き彫りになった。「イノシシが田んぼで泥浴びし寄生虫などを洗い落とすため、米が臭く売り物にならない」などの実害や耕作意欲の減退、里山の住環境悪化を懸念し、市では今春から有害鳥獣防止計画を策定。予算を昨年度の約2倍に増額し1頭当たりの捕獲報奨金を増やしたほか、電気柵の補助に1戸当たり最大5万円を助成している。

「数字に現れない被害もたくさんある」と指摘する声もある。つくば市沼田地区の稲葉一男さん(69)宅では、数年前から家の周囲に膨大な数の金網を張り巡らせているが、「イノシシは簡単に突破し軽々と飛び越えてくる。最近は門から堂々と入ってくるよ」と諦め顔。センサー付きのライトやチャイムなど、これまで自宅の防御策につぎ込んだ費用と労力は少なくないが、農作物以外への補償はない。

捕獲圧の問題


稲葉一男さんが家の周囲に張り巡らせたイノシシ除けの金網は、軽く20枚を超える=6月5日、つくば市沼田

今年1月末、つくば市沼田のつくば霞ヶ浦りんりんロード沿いで自転車の男性(70)が背後から体長1メートルのイノシシに襲われ、指を切断する大けがを負った。その後、散歩中の女性(73)の右手薬指をかんで逃走し軽乗用車と衝突、小学校跡地裏手の山に消えた。

事件後、市や警察、学校関係者らが周辺のパトロールに追われた。現場に向かった同市沼田区長の渡邊一雄さん(69)によると、件のイノシシは北条地区の城山で捕獲の網から逃れ興奮状態だったという。渡邊さんは「通学路に現れるのも時間の問題」と警鐘を鳴らす。

筑波山と同じ山系に属するつくば、石岡、土浦、かすみがうらの4市。年2回開かれる意見交換会で最近話題に上るのが、ある地域で捕獲した結果イノシシが他地域に移動する「捕獲圧」の問題。実際、石岡市では今年に入り国道6号付近で車との接触事故が発生。かすみがうら市では以前は雪入地区付近で見られたイノシシが戸崎や加茂など旧出島地区にも出没。通学路での目撃情報も寄せられたため、市では猟友会と連携して集中的に「箱わな」と「くくりわな」を仕掛けている。

筑波山麓のイノシシ問題を長年訴えてきたつくば市議の神谷大蔵さん(44)は、「獲るのも大事だが、イノシシのすみかとなる空き家や耕作放棄地をこれ以上増やさず、獲った肉をジビエなど新しい産業に生かせれば。登山客の安全への配慮も大切」と話す。秋口の繁殖期を前に筑波山一帯では、この夏わな猟が本格化する。

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