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2016年9月5日(月)

原発事故避難者 広域避難「オールつくば」の記録

筑波学院大×東京大、映像アーカイブ公開

福島第一原発事故以降、多くの避難者が逃れてきたつくば市。大震災から5年目の今年、筑波学院大学と東京大学の共同研究チームが、広域避難者支援や市内でのセーフティネットづくりに奔走した当事者の証言を集めた「映像アーカイブ」を公開した。未曽有の災害から逃れてきた隣人をどう支援し、避難者はどのように地域に溶け込んだのかー。映像からは、これから起こり得る災害への対応や共助の街づくりに生かせるヒントが伝わってくる。

茨城県のまとめによると、つくば市内に住む避難者は530人(8月30日現在)と県内最多。震災4カ月後から同市では避難者の交流会を開くとともに担当職員を雇い戸別訪問も実施。行政がコーディネート役となり学生を含む民間の支援者と避難者をつなぎ、広域避難者支援策とセーフティネット態勢の基礎を築いた。

アーカイブ撮影は2015年3月から1年4カ月かけて行われ、行政や大学、民間と避難者自助グループ17団体の支援活動の経緯、内容、活動の工夫、課題を収録。撮影時間は延べ14時間超にも及んだ。

避難者がインタビュー


「地域の問題を解決するのにも活用できるはず」と、映像アーカイブプロジェクトリーダーの筑波学院大講師・武田直樹さん

「大事故の被害者になるということは、こういうことなのかと身にしみた」

撮影とインタビューを担当した田部文厚さん(45)は、震災翌年からつくばで暮らしている。郡山市内で映像制作会社を営んでいたが、原発事故後は婚礼の撮影などが軒並みキャンセル。ロケに使っていた公園は立ち入り禁止になった。

アーカイブの撮影ではあらかじめ決められた質問以外にも福島弁で語り掛け、「単なる記録でなく、彼らのちょっとした沈黙や目線、表情から思いをくみ取ってほしい」。あるインタビューで支援者が漏らした一言が今も心に焼き付いている。

「避難者の気持ちに寄り添うってことは、必要以上に踏み込まないってことなんだよな」

他人ごとじゃない

「原発事故で風向きが茨城の方だったら…。とても他人ごととは思えない」

支援者側としてインタビューに答えた二ッ森千尋さん(48)は、つくばに避難した若い母親の交流を図る「ルピナスの会」を運営する。5年前、ふとしたきっかけで出会った母親の子どもが、わが子と同じクラスだった。原発事故の「見えない恐怖」から逃れてきた母親は見知らぬ土地で頼れる人もなく、「孤独な母親同士を交流させないと」といてもたってもいられなくなった。

個人情報の壁にはばまれたものの、学校の協力を得て会を発足。毎月の交流会では病院や習い事などの地域情報を交換し、たまにファミレスで他愛のないおしゃべりを楽しみ、「福島からの避難者」でなく、メールやラインも交わす「普通のママ友」になれた。

一度だけ、あの日の逃避行を皆で語り合ったことがある。誰もが経験したことのない非常事態の中で、人の最も嫌な部分を垣間見た。親しい友人の裏切りに遭い、幼子の手を引いて各地を転々とした。やみくもにガソリンが無くなるまで逃げ続け、たどり着いたのは見知らぬ街の路上だった。すべて、子どもの未来を思い動いた結果だった。深く傷ついた母親たちのために、筑波大学から専門家を招いてストレスケアの勉強会も開いた。

あれから5年が経ち、つくばに根を下ろしたり福島に帰郷するなど、母親たちもそれぞれの道を歩んでいる。「彼女たちを肯定し、困った時にいつでも相談できるよう窓を開けておきたい」。二ッ森さんには、今も自分が「支援者」という意識はない。

親戚のような関係に

全町避難が続く浪江町出身の古場容史子さん(61)は、避難者自助組織側としてインタビューを受けた。震災翌年から夫の泉さん(60)と避難者交流の茶話会「元気つく場会」を毎月開き、健康体操やブルーベリー狩りなど趣向を凝らしたイベントを行っている。

2015年8月末につくば市内で開かれた茶話会には、20人ほどが集まった。「冬はヒラメ、春はメバルがおいしいんだよ」。浪江町請戸地区で漁業を営んでいた門馬久敏さん(77)は毎月この集まりを楽しみにしている一人。「つくばに来た頃は、いわきナンバーの車を見つけてはよく声を掛けてたね」。門馬さんの家は津波で流され、土地は避難指示解除準備区域にある。「帰りたくても諦めるよりしょうがねぇべ?」。自らを笑い飛ばす。

障害者、外国人、子ども支援など地域の問題にも役立てて


おしゃべりに花を咲かせた元気つく場会の茶話会=8月28日

震災当日の浪江町。社協職員として集落からコメを集め、足の踏み場もない避難所で深夜までおにぎりを握った容史子さん。翌朝、昨日まですし詰めだった避難所はもぬけの殻。「あんたもビニール袋被って早く逃げろ」と怒鳴られた。「見えない恐怖」への混乱が始まっていた。

泉さんといわきに避難したが、親しくしていた訪問先の老人や残してきた仲間を思い、道中涙がとめどなくあふれた。夫の会社の支店で一息ついたとき、テレビで原子炉建屋の爆発を見た。「皆さん、生きて再会しましょう」と誰かが言った。それからの記憶がはっきりしない。

インタビューでは、元気つく場会をこれからどう維持していくかに時間を割いたが、今のところ自分たち夫婦以外に後継者はいない。それでも古場さん夫婦は「自宅に招いてでも続けたい」と前を向く。

映像アーカイブプロジェクトリーダーの筑波学院大講師・武田直樹さんは「映像を予期せぬ災害だけでなく、障害者、外国人、子どもの支援など地域コミュニティを考える際にも活用してほしい」と広く視聴を呼び掛けている。 映像は「つくば映像アーカイブ」で検索。

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