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2016年7月11日(月)

「鉛筆の先で部下を殺した」

特攻、「筑波海軍航空隊」で始まった?元兵士の遺品、7月27日から公開

太平洋戦争中、特攻作戦の「容認過程」に関わったとされる兵士の遺品が、7月27日から笠間市の筑波海軍航空隊記念館で公開される。同航空隊で操縦教官を務めた故林冨士夫さんは航空特攻兵器「桜花」の最初の志願者≠セったが、皮肉にも部下を出撃させる任務に配属。「自分は特攻への道を開いた」と苦悩の戦後を振り返るドキュメンタリー映画も今夏公開される。

映画「人間爆弾『桜花』?特攻を命じた兵士の遺言?」は林さんの独白で構成され、昨年フランスで公開後は各方面で絶賛された。6月の記者会見で澤田正道監督(61)は、「彼の言葉、息遣い、長い沈黙から生きる価値を考えさせられた。元特攻隊員が亡くなっていく中、風化していく記憶に抗いたい」と話した。

慰霊祭は1年365日


映画の1シーン。林さんは自爆テロが外国で「カミカゼ」と訳されることに強いショックを受けていた(c)太秦

林冨士夫さん(宇都宮市出身、享年93)は軍人だった父の影響もあり18歳で海軍兵学校に入学し、昭和19年5月に筑波海軍航空隊に着任。6月20日頃、海軍は戦局打開の切り札として航空特攻兵器「桜花」導入の是非を問う諮問(意思確認)を開いた。

史上初めての体当たりを前提とした兵器は、林さんら士官2人以上の賛同で「採用」との説明を受け、林さんは3日間悩んだ末に志願。ところが自身に出撃命令は出ず、特攻飛行訓練を経て翌日出撃する隊員の名を鉛筆で名簿に書くという任務が課された。

文字通り「鉛筆一本」で若い命を確実な死に向かわせる不条理な日々—。亡くなるまでの戦後70年余、「自分が特攻作戦への道を開いた」と悔やみ続けた。

誰が特攻を始めたか


笠間市旭町の筑波海軍航空隊記念館。副司令室に並ぶ林さんの遺品の数々

笠間市にある筑波海軍航空隊記念館は国内最大級の戦争遺構がほぼ当時のまま残り、2013年末の開館以来県内有数の観光スポットになっている。一時は取り壊しの危機に遭ったが、「特攻が始まった経緯を知っているのは自分だけ」という責任感からか、林さんは航空隊の記憶を後世に残そうと遺族会を組織し、慰霊碑建立などの先頭に立った。

現在も同館の存廃は審議中だが、「彼の証言が真実なら、ここは『特攻容認の地』として残すべき」と同館事務局長の金澤大介さん(45)。昨年6月に林さんが亡くなると段ボール箱10個分の遺品を預かり、1年に及ぶ証言の裏付け作業を始めた。

『自殺志願』と書かれた自伝には、桜花の意思確認が行われ悩み苦しんだ様子がつづられていた。「バイオリニストか声楽家になりたい」「男やもめの父のそばにいたい」と願望を天秤にかけ、最終的に残ったのは「(自分が桜花に乗らなければ)日本が負ける」だったという。

また、林さんと同時期に筑波空で訓練を受けていたという元隊員は「上官から『今度すごい部隊ができる。一発で確実に撃沈できる兵器らしいが、生きて帰れない』と聞いた」と証言。諮問の席順が書かれた資料も見つけ、昭和19年秋に組織された「神雷部隊桜花隊」の分隊長4人は筑波空の在籍経験者と判明した。

金澤さんは「当時筑波空にいた他の士官にも意思確認を行った証拠ではないでしょうか。桜花作戦は実行ありきで、予定の人員の確保が得られるまで諮問は続いた」とみている。「もし林さんが生きていたら、『あなただけの責任で特攻が始まったわけではない』と伝えたい」。

スクリーンの中の林さんは、澤田監督から特攻する時の気持ちを問われると、長い沈黙の後で「…良い気持ちでしょうな」とつぶやく。沈黙に隠れた思いをすくい上げるように、澤田監督は言った。「ある一つの方向に向かいつつある現在の日本の状況を、映画から改めて考えてほしい」。

映画は8月から東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次ロードショー。県内上映は未定。

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