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2014年12月8日(月)

夢を追い、夢つながる

横溝正史ミステリ大賞受賞 藤崎 翔さん

元お笑い芸人の小説家・藤崎翔さん(牛久市出身、29歳)がこのほど『神様の裏の顔』で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞した。一流芸人の夢破れ、安アパートで水風呂に浸かりながら書き上げた受賞作にはボケやツッコミを周到に配置し、「神様のような故人」の裏の顔が暴かれていく意外性が評価された。「お笑いも小説も人を楽しませることでは同じ」と早くも次回作に向け健筆をふるう。


金田一耕助像を手に「横溝先生の名前を『まさし』と読んでいました」とコメント=11月28日、東京會館で

授賞式で、選考委員の直木賞作家・黒川博行さんは「小説のキャラが明確。ぶっちぎりの1位じゃないが、最終選考まで順位は変わらなかった。藤崎さんはすでにリングに上がった。これからそのリングでいかに闘うかが問われます」と評した。

壇上に立った新人作家は「頂いた賞金で薄〜く長く生活し、良い作品を書いていきたい。でも、思ったより税金で引かれてますね!出版社の皆さん、お仕事ください!」と元お笑い芸人の血が騒ぎ、しっかり笑いを取ることも忘れなかった。

◆◆◆紙とペンさえあれば◆◆◆

牛久二中では「何となく」軟式テニス部に、竜ケ崎一高ではあこがれのサッカー部に入部するも練習についていけず1カ月で退部。何事も中途半端な少年の変わらない夢は「お笑い芸人」になることだった。

その一途さに両親も背中を押してくれ、卒業後上京。
2004年にお笑いコンビ「セーフティ番頭」を結成し、コントの台本を100本以上書き上げたが納得いくものは5本ほど。M?1やキングオブコントなどのオーディションに挑戦するものの、いつも2次予選で敗退した。

2010年春、お笑いに見切りをつけホームヘルパー2級の資格を取り「堅気の道」に路線変更したが、訪問介護の仕事もアパートの引っ越しで続けることが難しくなった。

「今さら元の世界に戻るのは後ろめたい。これは神様が『お前はマジメに生きるんじゃない!』って言ってるな」と前向きにとらえ、紙とペンさえあれば人を喜ばせることができる小説を書き始めた。

◆◆◆水風呂で書いた小説◆◆◆

芸人時代、荒唐無稽なシチュエーションで笑わせる筒井康隆の本を図書館通いで読破。
そこから想像を膨らませ次々に短編小説を書いては応募したが、昔の自分と同じくいずれも2次選考止まり。
しかし、2012年春に応募した新人賞でようやく3次選考に残り、「お笑いでネタの面白さよりお客さんによく届く声が不可欠なように、小説の最も大事な基礎を学んだ」と手応えを感じた。


受賞作『神様の裏の顔』

受賞作『神様の裏の顔』は2013年夏から執筆開始。
早朝のアルバイトを終えると、「都内底値」とされる12平米家賃4万5000円のアパートにこもり、節約のためエアコンも付けず水風呂に浸かりながらアイデアを練り、チラシの裏にプロットや人物造形を記した。

生前疎まれていた故人の葬式に集う参列者が、思い出をめぐらすにつれ次第に善人像が創られるという前作を逆にして、娘にも同僚にも近所にも神様のような存在だった元校長先生が参列者によって次第に悪人になっていくブラックユーモアを丹念に積み上げた。
湿気で膨張したチラシが60枚ほどたまったころ、笑いをちりばめた長編ミステリーが完成した。

自虐的な敗者コメントを用意して結果を待つこと数カ月。思わぬ朗報に「元コント芸人らしからず、リアクションは至って普通でした」と振り返る。

◆◆◆夢を追うこと恐れないで◆◆◆

2014年11月、母校の竜ケ崎一高で行った講演会では、「芸人時代に本気で夢を追った過程が小説で役立った。本気で夢を追うことが次の夢につながる」とさまざまな夢を抱く高校生に語り掛け、十八番のネタで久々の「大ウケ」を取った。

現在執筆中の作品のため「今回の受賞は全力で忘れたい」と話し、ほぼ完成したという第2作は早ければ2015年上半期に書店に並ぶ予定。
文学者にはない突飛なアイデアと空想力、そして何より「人を楽しませたい」という一途な気持ちを忘れず、「笑えるミステリー小説」を仕掛けていく。

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