筑波大学の学生が企画・運営するカフェALDOR(アルドア)がつくば市内にオープンした。市民や学生、研究者、外国人など多彩なつくばの住民が交流し新たなアイデアを生む場をつくりたい―と、わずか3カ月の準備で開店。カフェで働くスタッフたちは、店づくりやメニューに学生生活で学んできた「つながりの大切さ」を生かしている。

昨年9月、「所持金0円日本縦断の旅」敢行中にカフェの企画を温めていた代表の袴田大輔さん(24)は、仲間から集めたわずかな出資金を元手に、まったくの素人ながらも挑戦しようと準備をスタート。メンバー25人を店舗班、メニュー班、広報班、制作班に分け、ゆくゆくはすべての人に開かれたドアを目指そうと店の名前をアル(ALL)ドア(DOOR)と名付けた。
コンセプトなど店の屋台骨は店舗班ソフト面責任者の加藤遥平さん(22歳)が担当。名古屋の下町に育ち途上国開発援助を学ぼうと進学した加藤さんは、留学先のアメリカで週末に新鮮な野菜や果物、手作りジャムやパンが並ぶマーケットで地域の老若男女が気軽に交流しているのを目にし、その後訪れたバングラデシュではスラム街の調査活動で知り合った現地の日本人医師や銀行マンと世代や立場を超えて話し合った。こんな集いの場がつくばにもあればと思っていたとき、袴田さんから声が掛かった。
アルドアではスタッフが持ち寄った本と客が持参した本を交換でき、読み継がれた本の数だけ同じ話題でつながっていく。今後も「一日店長制」で週ごとに店の雰囲気を変えたり幅広い世代間交流ができる催しも計画中だが、準備段階では「人をつなげるだけなら普通のイベント開催で十分」という意見も内外から寄せられた。
なぜカフェなのか―。シンプルだが重要な問いに誰もが口を閉ざした時、メニュー班責任者の鈴木萌さん(21歳)が重い空気を払おうと皆にカレーを振る舞った。卓を囲んでおしゃべりすると肩の力が抜け、次々とアイデアがあふれた。「カフェでなくてはならない」答えが出た瞬間だった。
アルドアのメニューは試行錯誤と努力のたまもの。つくばの新名物として売り出し中の「つくば丼」をアレンジし、半熟卵とアボカドを加えタマネギをじっくり炒めたソースで味付けした。トマトベースに素揚げの野菜を乗せた「アルドアカレー」は数人分なら同じ味で作れたが、たくさん作ると毎回味が変わってしまう。コーヒーは知り合いのバリスタに豆を選んでもらったものの、うまくドリップできるまでに何百杯も失敗した。
そんな活動を通して店の魅力を発信するのが広報班責任者・田中宏明さん(20歳)。友人に「将来カフェを開きたい」と言った次の日に袴田さんに誘われるという、「まさに運命の出会いでした」。さっそくツイッターやフェイスブックなどのツールを使ってPRしたが、ここぞという時にアクセス数は伸び悩んだ。「人に伝えるってどういうことなのだろう」。悩みながらホームページのスタッフ紹介に心を砕き、客の意見をフェイスブックで受け付けた。「コミュニケーションは共感が大事。画面の向こうにいても同じなんだ」と気付いた。
◇ ◇ ◇

客足は順調だが、「まだまだ一般客が少ないのが課題」と加藤さん。以前、一生治らないと宣告された右足は留学先で偶然出会った人に治してもらった今、「もっと速く走れるかも」と可能性を追えるのも、すべては偶然のつながりから始まった。
フットサルのチャリティーイベントで地域の善意をつなぐ田中さんも「人をつなげた先に何が起こるか誰にも分からないのが面白い」と充実の毎日を送る。看護を学ぶ鈴木さんは忙しい合間を縫いながら店に通い、「お客様が『おいしいよ!』って言ってくれるたび、どんどん自分が好きになります」と目を輝かせる。
アルドアで働く学生たちは人をつなげる喜びを力に自分自身とつながっていく。オープンは土日のみ、午前11時〜午後9時。つくば市天久保3―3
Mail : cafe.aldor@gmail.com