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2009年8月17日(月)

青春の続き後世に

つくば工科高校放送委員会が『谷田部海軍航空隊の記録』DVD作成


太平洋戦争中、現在のつくば市上横場から農林団地にかけて存在した谷田部海軍航空隊(谷田部空)。戦後60余年が過ぎ、わずかに残った遺構から「谷田部に航空隊があったことを後世に残そう」と3年前、県立つくば工科高校放送委員会(根崎孝志教諭)が県内外に足を運び1年かけてDVDを編集。「戦争を知らない子どもたち」が元特攻隊員の取材を通し、戦争と正面から向き合った。


隊門が残る新潟での取材の様子

平成18年春、根崎さんは「NHK全国高等学校放送コンテスト・テレビドキュメンタリー部門」に出品するテーマ選びに悩んでいた。ふと、学校近くの国道354号線から農林団地に続く何の変哲もない橋が思い浮かんだ。橋のどちら側にも飛行場などないのに、「なぜ飛行場橋という名前なのだろう。もしや戦時中谷田部にあったという海軍の飛行場と何か関係があるかもしれない」。生徒に持ちかけると「先生、ゼロ戦かっこいいからそれでいこう」とドキュメンタリー制作チームが発足。早速インターネットで情報を集めたが、有力情報はなし。仕方なく橋と戦時中からある谷田部神社だけを手掛かりに取材を開始。慣れない手つきでカメラを回し、緊張で震える手で最初にマイクを向けたのは上横場地区長。話が進むにつれチーム全員が絶句した。「普段学校生活を送っている谷田部の空を、特攻機が飛んでいたなんて―」。

◇    ◇    ◇

1939年(昭和14)、谷田部空は霞ケ浦海軍航空隊谷田部分遣隊から独立し中間練習機「赤トンボ」で訓練を重ねたが、戦況の悪化で44年秋からはゼロ戦を使った実戦部隊になり、45年2月には神風特別攻撃隊「昭和隊」を編成。同年4月から6月にかけ沖縄近海に展開する米艦隊に54人中37人の隊員が片道燃料と500キロ爆弾を積んで突入した。

◇    ◇    ◇


神風特別攻撃隊「昭和隊」の第1陣

取材は進み、跡地に建つ筑波学園病院関係者は「航空隊の敷地は高い壁で覆われていた」と話し、民家に残る壁の一部や当時の防火水槽なども発見。武運を祈った谷田部神社はGHQの焼却を恐れ戦後、住民が移設していたという事実も浮上した。

さらに「生き残った特攻隊員が新潟県十日町市の寺に隊門の一つを移設した」という情報を得て現地に飛んでインタビューしたり、昭和隊隊長が作詞作曲した『ああ、神風昭和特攻隊の歌』のメロディーを知ろうと宮城の元特攻隊員も訪ねた。

落涙しながら思い出の歌を歌うその姿に「私たちは本当に深いところまで知ってしまったんだなぁという責任感で、胸がいっぱいでした」と根崎さん。「戦争末期には燃料がなかったから、芝生の滑走路に敵艦を描いて急降下する特攻訓練だけしていた」「自分で熱望して特攻に志願したものの、いざ出撃命令が下った時は死刑判決を受けたような気持ちで頭が真っ白だった」。そんな証言は、16歳の高校生にはあまりにも重く「もうやめたい」と音を上げる生徒もいた。元々コンテスト用に根崎さんが選んだテーマだったが、「元隊員たちの思いを受け止め、谷田部空を知らない人に伝えていく責任を全うしてほしい」と思いを伝えた1週間後、生徒たちは「最後までやります」と職員室を訪れた。

コンテスト用の作品は完成したが、それとは別に30時間以上も撮りためた膨大なテープを晩夏から翌春にかけ2枚組DVDに編集した。そして、2007年4月『谷田部海軍航空隊の記録』として谷田部空を扱った初の映像資料が完成した。表紙は兵舎から滑走路に続く道に咲いていた桜。これから死に逝く者と、彼らを見送る者がさまざまな思いで見上げたであろう桜は、今も飛行場橋近くの民家の庭先に一本だけ残る。その老木をカメラに収めながら「ゼロ戦かっこいい」と無邪気だった生徒たちは、取材を通して「自分たちの日常は数々の犠牲の上に成り立っていた」と重い歴史を胸に刻み、卒業後それぞれの道に進んだ。

64年前、自分が教える生徒と同年代の若者がこの空を飛び、やがて死ぬための過酷な訓練に耐えていた―。そんな隊員の胸中を想像しながらDVD制作に明け暮れた一年を振り返り、根崎さんは思う。「あまりにも短い青春を送った若者が谷田部にいたことを、どうか忘れてほしくない」と。

 


 

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