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92年の創設以来、塾や高校、幼稚園などの空き教室を転々とした「つくばインターナショナルスクール」(TIS)が今春、念願だった自前の校舎をつくば市上郷にオープンする。新校舎は「外国人子女が国際水準の教育を受けられる学校に」と、昨年3月に教職を早期退職して運営を引き継いだ加納正康さん(58)が私財を投じて建築。人生の後半を地域と海外を結ぶ教育に捧げようと決めてから1年、新たな一歩が始まる。

神谷森という字名の通り、篠竹がうっそうと生い茂るその地を購入したのは1985年。もちろん当時は将来その地に「つくばインターナショナルスクール」校舎を建てるなど考えもしない。小鳥の鳴き声で目覚め、井戸水を使い、まきで風呂をわかすなど、あこがれだった田舎暮らしの実現で十分満足だった―。
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眼科医を目指して受験勉強をしていたころアポロ11号が月面着陸し、ニュースの同時通訳を聞いて初めて英語にひかれた。短大で英語を徹底的に学び、編入した国際基督教大学で外国語教授法を習得し青年海外協力隊員としてエルサルバドルに赴任。日本語教師として現地の国立大学外国語学科に日本語コースを開設するなど奮闘していたころ、当時の茗溪学園校長の岡本稔さんに「国際教育のできる学校を創りたい。ぜひ教師に」と直々に誘いを受け帰国。約半年間学園の創設準備に携わり、79年から同学園中学高校で英語教諭を務めながら生徒の海外研修のサポートや留学生の受け入れなどを担当。また、ラグビー部顧問として大学時代に慣らした手腕を発揮したが、実はそのラグビーと中学時代の相撲で腰を痛めたことが、現在TISの仮教室として使用している自宅のフィンランド・ログハウスを建てるきっかけになった。
「腰の手術をするよう医者に言われて、手術は嫌なので太極拳と気功を習い始めたんです。で、自宅でもできるようにと広い間取りを検討したら、結局ログハウスになって」
その自宅にTISの教室を開いたのは昨年。TISを創設した米国人宣教師と筑波研究学園都市交流協議会の国際交流専門委員会で出会い、長く交流を深めてきた縁から継続を委託された。しかし、定年まであと数年―。人生設計が大きく変わる決断の勇気をくれたのは、ラグビーの合宿で寄り道した長野県小布施町の葛飾北斎美術館で見た「富獄三十六景」。その大作を70歳を過ぎて完成させた北斎に比べたら自分はまだヒヨッコ。「残りの人生を世界の子供たちの教育に捧げよう」と、約30年勤務した茗溪学園を早期退職した。
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現在、TISに通う児童はアメリカ、カナダ、タイ、バングラデシュ、韓国人などの小学1〜5年生まで男女計11人。この4月からは26人に増え、教師も現在の3人から5人に増える。宗教的な偏りがなく、あらゆる国籍の児童を受け入れる全日制の小学校で、教材は教科によってイギリスやアメリカ、オーストラリアなどの教科書を使い分け、現在インターナショナルバカロレアの初等教育課程(PYP)の基準に合う教育課程も準備中。授業のほかに誕生会などの昼食会や野菜作り体験も行い、休み時間には広い芝生の校庭で羽を伸ばす。完成間近な新校舎もフィンランド・ログの木造2階建てで、敷地面積1085平方メートルに10教室を完備。校舎の完成に伴い悲願だった学校法人としての認可も下りる見込みで、2010年に予定している中学校の開校にも弾みがつく。

「つくばには外国人研究者や留学生など約130カ国の7200人に及ぶ外国人が暮らしているのに、その子供たちが通う公設の国際スクールがありませんでした。紆余曲折を経たTISをきちんと法人化し、これまではぐくんできた国際教育の糸をつないでいくのが、私の役目だと思います」
授業料を極力抑えて父母の負担を軽くするなど学校運営での収入は見込めないが、それは覚悟の上。これまで支えてくれた多くの人や妻に感謝し、頼もしい教師たちと共に子どもたちの教育に全力投球する。
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