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映画を起爆剤に茨城を元気にしようと、昨年8月『桜田門外ノ変』映画化支援の会が発足。その仕掛け人として奮闘する水戸市の三上靖彦さん(50)が目指すのは、映画づくりを通して地元の歴史や文化を再発見してもらうことと郷土愛をはぐくむこと。映画製作者との交渉から金策、人集めなど準備は山ほどあるが、この半年間の歴史講座開催などで県民の関心も上向きに。水戸藩開藩400年の今年。いよいよ夏には撮影が始まる予定。

桜田門外の変は1860年(安政7)3月3日、孝明天皇の勅許なく日米修好通商条約に調印・開国し、幕府に反対する攘夷派を弾圧する安政の大獄を行った大老・井伊直弼を、水戸と薩摩の浪士(桜田十八士)が江戸城桜田門外で暗殺した事件。原作(吉村昭著『桜田門外ノ変』)では暗殺という非常手段を取らざるを得なかった水戸藩士の志や史実が、実行部隊の関鉄之介の目線で淡々と描かれている。
その映画化の構想は06年1月、三上さんらまちづくりに関心がある仲間たちが、2009年の水戸藩開藩400年を記念して「水戸藩が題材の映画をつくって茨城を元気にしよう」と語り合った席で持ち上がった。03年に県内で撮影された映画「HAZAN」支援の会の中心的存在だった橘川栄作さんも加わり、映画製作関係者と1年半以上の交渉を重ね映画化を決めた。監督・脚本には「男たちの大和/YAMATO」で知られる佐藤純彌監督が就任。早ければ今夏にも撮影が開始する。
「暗殺というイメージからか地元ではこの事件をネガティブに考える人がいる。また、その後の日本を大きく動かし明治維新の先駆けになったことを知らない人も。この映画が茨城を見直すチャンスになれば」と三上さん。
水戸で生まれ育った三上さんは生粋の水戸っぽ。筑波大学・同大学院時代は河川に関する研究に没頭し、卒業後はまちづくりコンサルタントとして都内の都市計画の会社に就職。駆け出しのころは頭でプランをひねり出し、新たな魅力付けをすればよりよいまちづくりができると考えていたが、父が経営するコンサルティング会社に入社するため帰郷してその考えは一変。「10年も20年もすれば廃れるようなビルや道路はいわば消耗品。現地をよく知り、その地域らしさを引き出す方が街の魅力が増す」と気付いた。
98年に父の後を継ぎ、03年にはまちづくりのノウハウを地域に生かしたいと「NPO茨城の暮らしと景観を考える会」を立ち上げ、水戸発祥のオセロの世界大会開催や水戸の中心街マップ製作、チャレンジショップ運営などさまざまな取り組みを試みた。そして今回の映画づくりは、映画の求心力と波及効果がまちづくりに生かせるかも―と腹を決めた。
『桜田門外ノ変』映画化支援の会設立に向けた準備期間は2年半にも及び、映画関係者との協議や事業計画などの話し合いを再三行い、同時に県内の各市町村長、商工・観光関係者、教育関係者などへ協力を呼びかけて回った。その間、支援の会を運営する同NPOが申請した事業計画が内閣府の「地方の元気再生事業」に採択され活動費としての助成金を得て弾みが付いた。
支援の会を設立した昨年8月からは映画製作が本腰に入る前に市民の関心を高めようと映画に関する史跡めぐりツアーや郷土の食文化講座、徳川斉昭が選定した水戸八景ツーリング、観光客へのおもてなし講座など60以上のイベントを企画し、4000人以上が参加してくれた。
去る3月7日には県立図書館でシンポジウムを開き、プロデューサーの岡田裕さんに講演を依頼。49年間さまざまな映画と向き合ってきた岡田さんは「変革の時代といわれる今だからこそ、幕末の時代に翻弄(ほんろう)される人々を見つめる映画「桜田門外ノ変」は格好の素材です。日本中で感動できる映画にするため支援の会には根っこを支えてもらいたい」と語り、会場いっぱいに詰め掛けた参加者は熱心に聞き入った。
そんな手応えを少しずつ感じながら、オール県内ロケを目指してロケ地候補を見つけては製作関係者に情報を提供。ロケが始まれば炊き出しやエキストラ支援など地域を巻き込んだ映画づくりにも拍車が掛かる。全国公開は来年夏の予定で、製作側は海外での配給も視野に入れ意欲を見せている。
動員目標は100万人。数々のまちづくりを手掛けてきたプロとして不安と心地よいプレッシャーを感じる三上さんだが、実は誰よりもわくわくしている―。
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