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記事配信 [2007-12-03]
 

シリーズ:夢開く・仕掛人(1) 日本一のプリンを作ろう!

地域ブランド作りに奔走する 小川町商工会青年部 山西 弘一郎さん

年末恒例のシリーズ企画。成功の裏側で努力を惜しまない仕掛人たちにスポットを当てた今年のテーマは「夢開く・仕掛人」。1回目は、ぜいの限りを尽くした日本一高級な「おみたまプリン」を世に出した仕掛人、小川町商工会青年部の山西弘一郎さん(39歳、小美玉市)。地元の新鮮な食材や有機飼料を使い世界にも通用するプリンを目指し、更なる改良を重ねています。


桐箱に2個入り1万円で再販売したプリンは12月中旬発売で限定50個

2年前の11月某日、早朝のテレビで紹介された「おみたまプリン」は、放送から数分後に完売。平飼い鶏の初生卵を使い、プリン専用のオーブンでとろとろに焼き上げられる高級プリンの価格は2個入り6825円。市を挙げて取り組んだおみたまブランドが日本中に名をはせた。

 小美玉市の百里飛行場(茨城空港)が民間共用になる計画が持ち上がった2000年(平成12)、小川町商工会青年部は「人が集うところに商いは起きる」をコンセプトに始動。

起爆剤として考えたのが百里を整備基地にして飛行場を潤す構想と、体のリハビリを兼ねたアスリートと老人が共存する町の構想。さらに有機食材や茨城の素材にこだわった商品開発だった。

まず青年部と、農業を志す若者の会「農志会」がチームを組み商品開発に着手。しかし、夢が大きいほど壁は厚く試作品はことごとく失敗に終わった。

そのころ知人を介して東京・麻布十番のフランス料理店が有機食材を探していると耳にした山西さんは、自営の肥料屋を通してかかわりがあった農家を紹介。これがその後の商品開発に向けて大きな一歩となった。

商工会事務局の女性部メンバーが協力し、スイーツブームの追い風に乗ろうと食材を特産品の養鶏とニラに絞り商品化を試みたが、どう考えてもニラからスイーツは無理と判断。幸い茨城県は卵産出量が日本一で品質優先の生産者も多い。知り合ったフランス料理店オーナーで日本食農教育協会代表を務める多田鐸介(たくすけ)シェフが「二極化時代の今、品質を取るか生産量を取るかしかない。だったら日本一高級なプリンを作ろう!」と提案。この一言でメンバーの気持ちが固まった。

食材にこだわった商品化に向け有機飼料で育てた平飼いの鶏を探した山西さんは、形が小振りで流通に乗らない初生卵があることを知った。鶏が卵を産み始めて一カ月以内の貴重な初生卵の栄養価はお墨付き。茨城全土を走り回り何とかかき集めた。

そして器は北茨城市の陶芸家・會田恵美さんが手掛けた特注の天心焼。器のデザインは世界の恒久平和を願うポスター「テロと報復」がフランス・ルーブル美術館に永久収蔵されている小美玉市在住の藤代範雄さんが考案した。

さらに多田さんの店のパティシエ星野秀介さんが加わり、日本一高級なプリン開発が本格的にスタート。当初は、下にビターキャラメルを敷き上に完全に焼かないとろとろのプリンを乗せたサンプルを持って首都圏の生協イベントを回り、毎回100〜200件のアンケートを取って味と滑らかさの調整を繰り返した。

時には輸送時の揺れで液状化して中身が崩れ、半分は作り直したことも。改良に時間を要したが結局、キャラメルを抜くことで解決。プロに任せれば手際も良く、出来上がりもきれいなため東京の多田さんの店でプリンを作り販売。でも山西さんには「いつかは地元に戻したい」との思いもあった―。

プリンは順調に売れ行きを伸ばしたが、昨年、諸般の事情で多田さんの店で作ることができなくなり、おみたまプリンは市場から消えた。


「おみたまプリンの濃厚さを味わって下さい」と山西さん(左)と水野さん

しかし、復活を願う声は多く、今年になって再出発を模索。一般の人は絶対手に入らない生乳が手に入る小美玉市の美野里ふるさと食品公社に製造を依頼。茨城の農業に興味があった多田さんの知人のパティシエ水野剛宏さん(27)にすべてが託された。プリンは低温でゆっくり焼けば焼くほど濃厚になるが、それを超えるとチーズになってしまうため温度管理が最重要。

「ぎりぎり固まるかどうかのころ合いを見極めるのが難しく、最初はどうしてもおみたまプリンの濃厚さが出せなかった」と水野さん。材料も市販の牛乳から生乳に変え、まず瓶に入れて焼いてみたが10分で火が入り過ぎて失敗。次にアイスクリームの紙カップからヒントを得て再挑戦。熱伝導が低い紙の性質が功を奏し、90度の蒸気が保てるプリン専用のオーブンを使うことで偶然にも上は濃厚で下は滑らかな2層の味わいが生まれた。

水野さんの粘りといくつかの好条件がそろい、この11月、ついに新・おみたまプリンが完成。つくば市のキーストーン(二の宮2―17―12洞峰公園前)で販売を始めた。

「実は茨城の新鮮な野菜にも魅力を感じていた」という水野さんは農家で手伝いをしながら食育の勉強にも励んでいる。山西さんは「形がそろってないと市場で売れないのが現状ですが、本当に大切なのは何なのか食を通した教育を進めていくことが必要」と次なる仕掛けを考えている。

 

 

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