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[2007.06.16 up]
 

近代五種をメジャーに

世界に挑戦する 黒須成美 さん

近代五種で北京五輪出場を狙った黒須成美さん(つくば秀英高1年)は5月11日、東京・馬事公苑などで行われたアジア選手権に日本人女性としてただ一人出場を果たしたが、16位という結果に五輪出場の夢は打ち砕かれた。しかし、気持ちを切り換えた15歳の女子高生は、日々の練習の中、階段を1段1段踏みしめるように、新たな目標に向かい上り始めた。


馬術に取り組む黒須選手。痛恨の時間切れ(0点)に加え右足を負傷したが、最終競技のランでは一人を抜き16位と健闘を見せた

その馬にまたがった瞬間ダメだと思った。

アジア選手権4種目目の馬術。先程まで騎乗していた中国人選手との呼吸が合わず、競技中幾度となくムチを入れられたその馬は外見とは裏腹にひどく興奮していた。

歩かせてみると力強くて速い馬だと分かったが、その能力の高さが逆に馬術を始めて1年半の身にはこの上ない不安を抱かせた。

おまけにフェンシングの後、ストレッチが不十分で乳酸のたまった足は、力が入らずにガクガク震えている。とはいえ、この馬術で満点に近い点数を稼げば北京五輪出場の可能性も最終競技のランまで分からなくなる。

何としても、最後まで諦めないように気持ちを奮い立たせたが、不安とない交ぜになったその心をじかに接する繊細な馬が気付かないわけがない。最初の柵こそ飛び越えてくれたが、その後は柵の手前まで走るとブレーキの連続。なかなか飛び越えないばかりか、揚げ句の果てには振り落とされ右足を強打。結局、自分自身の体調と経験の無さから来る不安を抑えられず、馬を信頼し、そのスピードに身を委ねることが最後までできなかった。

だから、時間切れを告げられた時はただただ悔しかった。「馬のせいじゃない、悪いのは乗りこなせなかった自分」と。

競技場の端で馬から下りるとその場でうずくまり、しばらく立ち上がることができなかった。とめどなく流れる涙に困った5月11日、図らずも馬事公苑は五月晴れの快晴だった。抜けるような青い空の下、時折吹き抜ける心地よい風は、北京行きの追い風とはならなかった。

◇     ◇     ◇


つくば秀英高校で

「今でもよく覚えているんですけど小学6年の時、お父さんに楽しいところ連れてってやるぞって言われて…」

父・秀樹さん(44)に車で連れ出され、その持ち物をまず不思議に思った。「水着はどこかのプールで遊ぶとしても、陸上のウエアは何?」。その行く先で行われた近代五種の育成大会で優勝したのが競技を始めるきっかけになった。

もともと大学時代、競技者だった父は、「3人の子供たちの中で誰かに近代五種をやってもらいたかった」が、怒られてふて寝しても、次の日にはケロッと忘れて近寄ってくる真ん中の長女に可能性を見いだした。

射撃、フェンシング、水泳、馬術、ランの全く異なる5つの競技を行う上ではまず気持ちの切り換えが重要になる。

中学入学後、大会で男子競技の迫力を目の当たりにし感動。やがて本格的にのめり込むようになり、生来の負けん気の強さとスポーツ好きの素養が、小1から取り組んだ水泳を別に、それぞれ浅い競技歴をカバー。そして昨年のアジア選手権5位という結果は、弱冠15歳にして北京五輪出場権の懸かった今大会に期待を膨らませたが、秀樹さんは言う。「やっぱりそんなに甘くないですよ。中国などの選手は育成環境は整ってますし、将来のためにも必死ですから」。

毎日トレーニングできる水泳とランを除けば、馬術とフェンシングは土日を中心に日数は限られる。さらに、銃刀法の規制で18歳未満は銃(エアピストル)を所持できないばかりか国内大会の出場さえままならない。今大会の出場も、秀樹さんが関係省庁と掛け合った末にもぎとった特例だった。

自分の銃でなければ大会には出場しないという選手が多勢を占める中、借り物の銃が大きなマイナスになったことは言うまでもない。しかも昨年8月、台湾で初めて本物の銃を撃って以来4大会目。自宅庭ではBB弾(プラスチック弾)を撃ったが競技銃の感覚とは異なる。練習時間や環境の整備、遠征費等も含め、これから15歳が世界と伍していくために、克服しなければならない課題は尽きない。

アジア選手権から一カ月が過ぎ、ようやく北京五輪出場への重圧から解放されたことを実感するが、励ましの言葉やねぎらいの言葉、多くの人が投げ掛けてくれたそれらの言葉に感謝しつつもやはり「北京には行きたかった」。

いまだ悔しさはこみ上げてくるが、4年後を見据えた練習はすでに始まっている。現在、競技者レベルでは日本人女性唯一の存在だが、「たまには友達とディズニーランドに行ったり、プリクラも撮りたい」等身大の女子高生でもある。「もしも1種目だけの競技なら今より時間がつくれるのかなって思いますけど、やっぱ五種目もあるとスポーツ好きにとってはお得じゃないですか。どの競技もトップレベルというのは大変ですけど、私が結果を出していつか近五(近代五種)をメジャーな存在にしたいです」。父が娘に託す夢もまたそこにある。

 

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