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[2007.06.11 up]
 

無関心層にこそ防災力を

自作の小道具で楽しく分かりやすく実験 〜 Dr.ナダレンジャーこと 納口恭明さん

防災科学技術研究所の総括主任研究員、納口恭明(のうぐち・やすあき)さん(54)は、知る人ぞ知る人気者。雪崩を専門に自然災害の防止・軽減の研究に明け暮れる一方、時折怪しいいでたちのDr.ナダレンジャーに変身してつくば市内外に出没。手品のようにさまざまな小道具を取り出しては雪崩や地震を再現し、子供たちの目を釘付けにしながら災害の仕組みを楽しく解説。「災害に関心のない人に教えることこそ防災研究の要」と、ナダレンジャーの技に磨きをかける。


昨年の夏、東京・三越日本橋店屋上で実験を披露したDr.ナダレンジャー

金髪のかつらに紙製の色眼鏡とひげ、白ワイシャツに黒ネクタイ。

前触れもなく初詣でや初午の場に現れて警戒気味の通行人に「ちょっと見ていきませんか」と声を掛けることもあれば、お祭りステージやデパート、スーパーで子供たちの輪の中にいたり、幼稚園から大学、成人学校まで各種出前授業に出向いたりと、Dr・ナダレンジャーは神出鬼没。

しかし、その怪しさとは裏腹に楽しく興味深い実験が子供も大人もとりこにし、しまいには「なるほど、災害はそういう仕組みなのか」と納得させる。

勝負は「いかに目立ち、記憶に残るか」。その手応えを得られるまでに、約10年の歳月を要した。

「最初は研究所内で職員に見せることから始まり、研究所の一般公開などで少しずつ外向けに活動するようになったんです」

新潟県長岡市の雪害実験研究所からつくばの現研究所に移ったのは97年。北海道苫小牧市に生まれ、父の仕事で道内を転々とした後、北海道大学、同大学院博士課程を修了して就いたのが新潟の研究所。81年(昭和56)の豪雪で多くの人が雪崩の被害に遭ったことから声が掛かり、16年にわたって雪と氷に関係した災害について研究。同時に、見学者を案内しながら施設の研究内容を解説するものの、その多くは聞き流すだけ。どうすれば雪崩や防災に関心を持ってもらえるのか―。その自問自答をつくばに持ち越した。

当たり前に雪があった新潟からめったに雪を見られないつくばに移り環境が一変。一般の人と触れ合う機会は格段に増え、各分野の優秀な研究者も多い。その中には、自分と同じように研究を一般に伝えたいと思う人もいると知り、がぜんやる気がわいた。

もともと人前で何かをするのは嫌いじゃない。「研究者と一般をつなぐ橋渡しになろう」とナダレンジャー変身計画を進め、実験材料を着々と準備した。

「最初はサングラスと付けひげだったんですが、リアルだと逆にだめですね。気持ち悪くて。いかにも作り物とばれる物のほうが子供たちに受けるんです。あー、偽物だーってね」。


実験に使う材料を多数ストック。「何をどう使おうかと思案する時間がまた楽しい」と納口さん

白ワイシャツと黒ネクタイは、数年前にクールビズが提唱された時、逆に目立つことを狙って100円ショップでそろえたもの。

実験に使う材料もペットボトルやスポンジ、空き缶、空き箱などさながらリサイクル。しかし「こういう実験材料はお金をかけようと思えばきりがないし作るのも簡単。むしろ安く仕上げる方が難しい。これ以上安く作れないという点で今は私が一番」とにっこり。

冗談とも本気とも取れる話についつい引き込まれるのは、Dr・ナダレンジャーのなせる技。

その名前の由来でもある雪崩のシミュレーター、ナダレンジャーを使って雪崩を体感したり、ペットボトルに水と砂、丸ピンを入れた通称「エッキー」で液状化現象を見たり、高層ビルに見立てたスポンジでビルの高さと地震の揺れの関係を見るなど、一見、子供向けと思われがちな実験が実は大人にも分かりやすく好評。

その実験は屋外になると規模も拡大。発泡スチロール製ブロックを4mの高さに積み上げて倒す迫力の地震実験となると子供たちは思わず絶叫。災害の仕組みを体で覚え、大人になっても覚えていてくれる―。それがDr・ナダレンジャーの目指すところ。

「防災セミナーやイベントなどに参加する親や子供は関心がある人たち。でも、本当に伝えたいのはそうしたイベントに来ない無関心層です。だから街中に出没するわけです」 

約2年半前から始まった出前授業は年間60〜70カ所を回り、約150日はイベントに参加。そうした地道な活動とユニークな実験プログラムが評価され、今年3月、ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が設立した平成基礎科学財団による第3回小柴昌俊科学教育賞を受賞。もちろん授賞式にはナダレンジャーの扮装(ふんそう)を持参したが「とっさの呼び出しで変身できませんでした」。

鉄人28号を開発した科学者の雰囲気と研究にあこがれ、研究者を目指した少年の目は今も健在。「85歳が自分のピーク。それを過ぎて円熟味が増すんじゃないかな」と語るDr・ナダレンジャーの広大な計画はまだまだ続く。

 

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