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[2006.07.10 up]
 

目に見えないすてきなものを伝えたい

自分にできること1つずつ 〜つくばの鈴木もえみさん〜

つくば市の鈴木もえみさんは「つくばマラソン」や「まつりつくば」などの総合司会や朗読・読み聞かせなど、ジャンルを問わず幅広く活躍。かつて子供テレビ番組で親しまれた「お姉さん」は妻となり母となった今も、プロとしての仕事にこだわり、一層その輝きを増している。


7月8日、東京・板橋区立文化会館で

ライアーの美しい音色と共にその人形劇は始まった。7月1日、午後2時つくば市アルスホール。ストーリーを紡ぐ優しい声が会場を包むと、それまでキョロキョロしていた子供たちの視線は人形たちが軽やかに舞う小さなステージへと向けられた。

マイクを使わないのはライアーの生音を最大限にいかすためだったが、できればこの日はマイクがほしかった。体調を崩し熱は点滴で抑えている。油断すればかすれそうな声を滑らかで張りのある声の下に隠し、結局会場の誰にも気付かれずに司会と語りを終えたが、体調管理の失敗に課題は残った。

フリーの今、自分の代わりは誰もいない。だからこそ常に最大限のパフォーマンスが身上。それがこれまで培ったプロとしての矜持(きょうじ)でもある。

北海道の新聞社に勤める父とピアノ教室を開く母の下に生まれ、高校時代は放送部に在籍。高2の全国大会・アナウンス部門のベスト8入りが才能の萌芽なら、その開花はHBC北海道放送局が募集したラジオ番組「いきいきいい朝」のパーソナリティーに選ばれた大学1年の時。さらに、そこで働いた5年の間に全国番組コンクール「最優秀グランプリパーソナリティー」を受賞し機は熟した。その輝かしい実績を引っ提げ上京したのは23歳の時だった。

以降、TBS報道局のレポーターとして甲子園や高校ラグビーを取材。夢中で仕事に取り組んだが、泣き崩れる選手の取材がどうしてもつらくなった。持ち前の明るい声が場違いに聞こえ、「この声の特性を生かせる仕事に就きたい」と悩むようになったころ、フジテレビの子供番組「ひらけ!ポンキッキ」のお姉さんの募集を知った。劇団出身者など、歌や踊りに素養のあるそれまでのお姉さん像を覆し、見事8代目お姉さんに抜てきされたのは87年。木の内もえみとして全身全霊を込めた仕事は瞬く間に2年半が過ぎたが、折りしも人気絶頂期、突然結婚引退を決意し周囲を驚かせた―。

所属した事務所をはじめ周囲の猛反対をよそに、「お姉さんの代わりはいても結婚する自分自身の代わりはいない」と、その固い決意は変わらなかった。夫は仕事を続けることに賛成したが「いつもその時に大切なことを一つだけ選ぶ」。それまでも常に一番最良の選択をしてきた自負もあった。

一方、事務所から引き留め役に指名された母・恭子さんも関係者と同じく「今やめるのはもったいない」と思っていたが、「もうやることみんなやったからいいのってそう言うんです。上京した時もそう。一度決めたら本当に頑固な子なんですよ」。ポンキッキはそれまでの夢をすべてかなえてくれたと言い切れる―。1989年9月15日の収録を最後に木の内もえみを卒業した。

1990年5月、鈴木もえみとしての新生活は、誰一人友人、知人のいない夫の赴任地つくば市で始まった。大勢のスタッフに囲まれた生活から一変、夫以外誰とも話さない日も珍しくなくなると、そのギャップと時間を持て余した。寂しさに耐え切れず札幌の母に電話すると、「幸せはいつも目の前にあるものだから、笑って顔を上げてきれいなものをたくさん見なさい。近所もたくさん冒険しなさいって」。

すてきな店があれば1人でも入ってみる。美しい自然に目を向けてみる。そうしているうちに少しずつ勇気がわき次第に友達もできた。やがて長女が誕生し通い出した乳幼児学級。読み聞かせの当番で本を読めば皆が褒めてくれる。「だって元お姉さんだもん」。心の中で舌を出す日々はやがて、朗読や司会を依頼される今日の忙しい日々に変わるが、「子供が帰ってくる時間には家にいたい」。多忙とはいえ決して仕事に忙殺されることなく、妻として母として、今はつくばにしっかり根を下ろし生きている実感がある。

7月8日午後3時半、東京都板橋区立文化会館。「つくばでの活動で身に着けたすべてを発揮したい」と臨んだ第34回東京サロンオーケストラシンフォニックコンサート「白鳥の湖」の朗読は見事成功に終わった。会場を見渡せばポンキッキの元プロデューサーをはじめガチャピンやムックの担当者、美術スタッフら当時の懐かしい面々が見える。TBS時代の友人やつくばの仲間たち、札幌からは母や幼なじみも駆け付けてくれた。多くの人に支えられてきたからこそ今がある―。鳴りやまない終演の拍手に、ぐっと胸に込み上げてくるものがあった。

「目に見えないものの力を信じているんです。それは音だったり空気だったり。楽しい雰囲気が会場を訪れるすべての人に伝わって安らげるような、そんなお手伝いができればうれしいですね」

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