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2006年1月16日

ヒーロー漫画家が見つけたもの

後半人生で新たな花咲かせる桑田二郎さん

「月光仮面」「エイトマン」などで50年〜60年代を風靡(ふうび)した漫画家の桑田二郎さん(70歳、鉾田市在住)は、13歳でプロデビュー。ヒーローの活躍に多くの少年少女が夢を膨らませた一方で、学業と漫画との両立や人気商売の無情さに生きる気力を失っていった桑田さんは、40代で少年漫画界から身を引き苦悩の果てに仏教教典の漫画化にたどり着いた。「マンガで読む般若心経」はベストセラーとなり、続編を次々に出版。今年も新刊の準備に追われている。


「今は生きることが楽しい」と体調も回復した桑田さん

「食えなくなると次の作品がヒットし、しばらくは忙しくなる。で、また下火になって食えなくなる―。若いころはそんな繰り返しでした」

生まれ故郷、大阪での両親と兄のつましい4人暮らしに変化が訪れたのは、中学に上がった13歳の時。漫画好きが高じて地元の出版社を回り自作を売り込んだところ、ある会社に認められ48年に単行本化。それがデビュー作のSF「怪奇星団」。以後、継続して作品を発表するようになり、微々たるその原稿料が病気で職を失った父の代わりに家計を支えていた。

高校進学も望んだが苦しい生活状況でかなわず、本格的に漫画の仕事で身を立てようと中学3年で単身横浜に越し、雑誌の漫画を手がけるようになった。

そんな桑田さんが注目されるようになったのは、22歳の時に描いた「まぼろし探偵」。そして1年後の58年、大ヒット作「月光仮面」の仕事が舞い込んだ。

「テレビで放映が始まるので、それに合わせて漫画を描いてほしいと依頼が来たんです。自分流の絵を描いていいならばと引き受けました」

連載したのは少年マガジンの前身「少年クラブ」。当時、月光仮面の連載で発行部数が3倍に伸びたといわれ、桑田さんの睡眠時間はナポレオンをしのぐ1日3時間、ファンレターや年賀状はミカン箱いっぱい届くようになった。その人気が買われ、5年後、月光仮面に続くヒーローもの「エイトマン」の仕事が来た。

「そのころは手塚治虫の鉄人28号や鉄腕アトムが全盛でしたので、エイトマンはそのどちらにも似ていない全く別のキャラクターにしてほしいという依頼でした」

実は「エイトマン」のキャラクター誕生には裏話がある。桑田さんがあれこれ案を考えて最終的に2枚の絵を編集者に手渡すと、編集者はその2枚をある小学校で「どちらがいいか」と子供たちに見せ意見を聞いたという。結果、2枚それぞれの顔と首から下を合体させる声が多かったことから、キャラクターが決定した。


ヒット作の「月光仮面」(左)と「エイトマン」

人気が落ちるころに次のヒット作が巡ってくるという運に恵まれ、寝る間もなく働いた20代から30代。本格的に絵を学んだわけでもなく、ほかの絵を真似て練習を重ね独自の画風を築いてきたが、「不思議なもので少年漫画の世界は絵がうまくなると売れなくなる」と桑田さん。

「一生懸命になるとだめ。ばかばかしいくらい派手に、あり得ないような絵でないと売れないんですよ。それが子供の感性なのかもしれません」。

売れる一方で2度の結婚離婚を経験し、デビュー当初から胸に巣食っていた「生きることのむなしさ」はやがて「死」を現実に近づけた。漫画を描いても一生懸命になれない自分。一生懸命になれる何かを探そうと42歳で少年漫画界から身を引いた。収入は無く蓄えも底をつく苦しい暮らし。そんな精神的な放浪を経てたどり着いたのがめい想だった。

それを機に仏教教典や聖書、論語、古事記などあらゆる教えを読みふけり、その意味を理解するようになると自分の役目も見えてきた。「難解な教えを身近なものに変えて漫画で表現しよう」。食うや食わずの状況で、それは半ば賭けにも似ていた。

50歳のころ「般若心経」の漫画を描き始めると、タイミングよく出版社から出版依頼がきた。シリーズ全3巻の「マンガで読む般若心経」は爆発的に売れ再版を重ねた。目先の新しさと面白さからテレビや各マスコミでも取り上げられ、続編として「マンガで読む論語」「宮本武蔵―五輪の書」などを次々に発刊。「何とか飢えずに生き延びられた」。

縁あって東京から鉾田市に移り住んだのは約20年前。当時の大洋村村長の勧めで仕事場兼住居の家を建て、1人で暮らしている。一昨年の暮れに体調を崩し昨年は療養の日々。好きなたばこもきっぱりやめた。今年は新たなマンガシリーズの発刊に向け、体を慣らしながら筆を走らせている。

「私のヒーロー漫画で育った人も今は実年世代。いろいろあるでしょうけど夢を忘れず明るく生きてほしいですね」 。

 

 

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